お知らせ

船舶事故削減を実現する解決策をこころ壱岐と共同開発

株式会社シーテックヒロシマは、長崎県壱岐市で釣り体験を通して海の豊かさと楽しさを伝え地域密着で新たな取り組みを行っている株式会社こころ壱岐(以下、こころ壱岐)と船舶業界の長年の課題である衝突事故削減に向けた製品を共同で開発に取り組むことに合意いたしました。

海の長年の課題である船舶の衝突事故を解決するために始動~

減らない船舶事故

衝突事故は長年解決できていない船舶業界の課題でした。

船舶の衝突事故発生件数は毎年2,000件前後で推移しており、衝突事故の79%は漁船やプレジャーボートをはじめとした小型船舶が起こしています。発生原因として大きな割合を占めるのが「他の船や岩礁が近づいていることを認知できなかった」ことによる【見張り不十分】だとされています( 令和2年度 海難の現況と対策より引用 )。

小型船舶は乗組員が少ないことが多く周囲の監視が行き届かないため、海面や周囲の情報不足になりがちです。そういった情報不足を補うために近年では相互に位置を知らせるAIS(船舶自動識別装置)装置の開発が進められてきました。しかし、船舶専用の位置情報通知装置は、高額な費用や高難度な操作性が機器導入の大きな障害となっており、漁船のAISの利用に限っては0.5%しか使われていません( 日本財団 漁船の操業安全と海難防止より )。

結果としてAISを非搭載の漁船が87%もの衝突事故を引き起こしています。

【 壱岐で開発する意義

シーテックヒロシマは結成当初から当事者の意見や要望に寄り添い、先端技術と組み合わせることで課題の実現を目指して参りました。今回、私たちが取り組む船舶事故についても同様に現地に足を運び徹底したヒアリングとリサーチを重ねたところ、長崎県の壱岐を拠点に活動し、地域特性を深く理解しつつ課題の抽出・解決を解像度高く実践しているこころ壱岐と出会いました。

こころ壱岐はユーザーに壱岐ならではの豊かな海と自然との共存を体感させるサービスを提供している企業です。地場の壱岐の海を、日本の海をより豊かにするために新しい取り組みを行っているため地元の漁港や企業と深い関係構築が進んでいます。

また、壱岐は日本海流と対馬海流の潮目にあたり700隻を越す漁船が行き交う漁師町です。スルメイカやカツオの漁獲高も高く、クロマグロに至っては「東の大間、西の壱岐」と称される日本有数の水産地( 農林水産省統計情報-壱岐市基本データより )であり、水産業をはじめ1次産業から3次産業までが1つの島で完結するエコシステムが構築されている日本でも数少ない地域特性を有しています。

今後は水産に携わる様々な可能性を秘めた魅力あふれる壱岐で、こころ壱岐の壱岐に特化し抽出された解像度の高い課題と現場の声を反映しものづくりを行うシーテックヒロシマの持つ先端技術群を融合させ、共に船舶の衝突事故削減へ向けた製品の開発に取り組んで参ります。

船舶衝突予防・検知装置の開発

現在の海上での衝突予防といえば、AISばかりではなくスマートフォンアプリもリリースされてきていますが、実際に使われているのはごくわずかです。原因としては、揺れている船の上ではスマートフォンは落とす危険性もあり、魚で汚れた手でスマートフォンを触ることはほとんどありません。デバイスを指で操作しなくとも危険を察知することを考えた末、私たちはウェアラブル端末に着目しました。手軽に身に着けることができ、振動や音声といった体感的に危険を知ることができる端末を構想しております。実際の壱岐の漁師と共にインターフェイスや振動による体感の実証実験を行う計画で進んでいきます。

前段で触れた船舶用の衝突予防装置は現在、AISとスマートフォン用アプリケーションが主流です。簡易なスマホアプリが登場しても海洋従事者の使用率はごく僅かで衝突回避・予防の実現には至っていません。私たちの独自調査で上がったスマホアプリが使われない要因は主に三つでした。

  • そもそも操舵室に置きっぱなしで作業中には見ない
  • 船上の激しい揺れではスマートフォンを落下させる危険性がある
  • 汚れた手でスマートフォンを触ることに抵抗がある

これらの現場の生の声を解決するために私たちが着目したのが「ウェアラブル端末」でした。スマートフォンが離れた場所にあっても短距離通信で通知が可能になり、身につけることで落下の危険性を最小限にし、画面に直接触れることなく意識外の岩礁や船舶の接近を音や振動、光で直感的に知ることができます。

デバイスの形状や装着位置、通知方法などをシーテックヒロシマが開発し、使用感をこころ壱岐にフィードバックしてもらうことで実際に使っていただけるプロダクトに仕上げるための実証実験を来春に予定しています。情報は随時公開して参りますので引き続き応援よろしくお願いします。

【 こころ壱岐について 】

2020年4月に創業。「持ち物は、遊び心だけ!」「大人が楽しいから、子どもも楽しい。」をスローガンに、船釣りを通して豊かな海と自然との共存を手ぶらで体感できるサービス「わんぱっく壱岐」を提供している。自身も漁業権を持ち、船釣りの楽しみを伝えている。2020年7月にはクラウドファンディングにも成功。D2C事業や漁港のシステム改変にも尽力している。
本社:長崎県壱岐市
代表者:立山晋吾
URL:https://www.cocoro-iki.jp